産後うつ

これって産後うつ?チェック方法や対処方法を徹底解説

妊娠・出産という大仕事を終えて迎えた、可愛い我が子。頑張っていいお母さんになろうと思っていたのに、いざ子育てをしようとしたら思い通りにいかず、自己嫌悪に陥ったり、気分が落ち込んでしまったり、不安感に苛まれてしまったという人もいるでしょう。

最初は誰もがこういった子育ての壁にぶつかるものですが、もしその気分の落ち込みや不安感が長期間続くようであれば「産後うつ」を疑った方がいいかもしれません。産後うつはれっきとした病気であり、早期の対処を怠ったり誤った対処をしてしまったりすると、大きな問題になる恐れがあります。

この記事では産後うつの概要や原因、産後うつのチェック方法や対処方法をまとめてご紹介していきます。

産後うつとは?

そもそも産後うつとは、妊娠中から産後4週間以内に現れる2週間以上続くうつ症状で、うつ病の一種です。気分の落ち込みや意欲の低下といった憂鬱な気分に陥る精神的症状をはじめ、頭痛や不眠などさまざまな身体的症状を併発する脳の病気です。「心の風邪」と軽く捉えられることもあるうつ病ですが、数日で自然に治癒する病気ではなく、特に産後うつは短期間で重症化しやすいとも言われています。

厚生労働省「周産期医療体制のあり方に関する検討会」(資料4)にて使用された資料によると、産後うつの発症率は、病院で受診していない潜在的な産後うつの方も含めると全体の10〜15%。早期に適切な治療を行わないと、育児放棄や児童虐待、最悪の場合は死を選択してしまう危険な状態を招く恐れがあります。

産後うつの症状

産後うつは症状も人によって少しずつ異なってきますが、一般的に以下のような症状が見られると言われています。

―疲労感、不安
―不安・緊張・パニック
―イライラする
―希望を持てない
―集中力や記憶力が弱くなる
―気分が変化しやすい
―せかせかする
―興味に欠ける
―自分を責めてしまう
―自分を情けなく思う
―食欲がなくなる
―子供や夫に対する愛情を感じられない  など

症状が多く出ている場合は、できる限り迅速に医療機関などに相談して対処することが大切です。

参考URL:産後うつ病の母親向けリーフレット-日本周産期メンタルヘルス学会-

マタニティブルーと産後うつの違い

産後気分の落ち込みを感じる場合、「マタニティーブルー」を疑う人もいるかもしれません。しかし、産後うつとマタニティブルーは全くの別物です。

マタニティブルーは約半数のお母さんが経験するホルモンの変化や急激な環境の変化による一過性のうつ状態で、産後1〜2週間くらいで自然に軽快します。

一方、産後うつはマタニティブルーよりも発症が遅い傾向にある強いうつ状態。脳の状態も一般的なうつ病と同じで、立派な病気となっています。

産後うつのチェック方法

産後うつが疑われる場合は、エジンバラ産後うつ病自己評価票 (Edinburgh Postnatal Depression Scale: EPDS|北村メンタルヘルス研究所) という、ご自身でもできるチェック方法があります。これは1987 年にCoxらが開発した自己記入式質問紙で原版は英語ですが、現在58 ヶ国語の翻訳版が作成され、国際的に広く普及しています。

質問は選択式で、全部で10問。各質問項目の回答に 0 点から 3 点までの得点をつけて評価し、合計点は最小 0 点、 最大 30 点となります。チェックする際は、今日だけでな、過去 7 日間に感じられたことに最も近い答えを選ぶようにしてください。

質問

1.笑うことができたし、物事の面白い面もわかった。

(0)いつもと同様にできた
(1)あまりできなかった
(2)明らかにできなかった
(3)全くできなかった


2.物事を楽しみにして待った。

(0)いつもと同様にできた
(1)あまりできなかった
(2)明らかにできなかった
(3)全くできなかった


3.物事が悪くいった時、自分を不必要に責めた。

(3)はい、たいていそうだった
(2)はい、時々そうだった
(1)いいえ、あまり度々ではなかった
(0)いいえ、全くそうではなかった


4.はっきりとした理由もないのに不安になったり、心配した。

(0)いいえ、そうではなかった
(1)ほとんどそうではなかった
(2)はい、時々あった
(3)はい、しょっちゅうあった


5.はっきりとした理由もないのに恐怖に襲われた。

(3)ほとんどそうではなかった
(2)はい、時々あった
(1)はい、しょっちゅうあった
(0)いいえ、そうではなかった


6.することがたくさんあって大変だった。

(3)はい、たいてい対処できなかった
(2)はい、いつものようにはうまく対処しなかった
(1)いいえ、たいていうまく対処した
(0)いいえ、普段通りに対処した


7.不幸せなので、眠りにくかった。

(3)はい、ほとんどいつもそうだった
(2)はい、ときどきそうだった
(1)いいえ、あまり度々ではなかった
(0)いいえ、全くそうではなかった


8.悲しくなったり、惨めになった。

(3)はい、たいていそうだった
(2)はい、かなりしばしばそうだった
(1)いいえ、あまり度々ではなかった
(0)いいえ、全くそうではなかった


9.不幸せなので、泣けてきた。

(3)はい、たいていそうだった
(2)はい、かなりしばしばそうだった
(1)ほんの時々あった
(0)いいえ、全くそうではなかった


10.自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた。

(3)はい、かなりしばしばそうだった
(2)時々そうだった
(1)めったになかった
(0)全くなかった


※() 内は点数

※著作権は、英国王立精神科医学会(Royal College of Psychiatrists)に帰属する

エジンバラ産後うつ病自己評価票 (Edinburgh Postnatal Depression Scale: EPDS|北村メンタルヘルス研究所) より

チェックしたら、各質問の数字を足してみましょう。日本語版では9 点以上で産後うつ病の可能性が高いとされています。もし9点以上の点数が出た場合や近しい数字が出て不安な場合は、専門機関に相談してみるのをおすすめします。

産後うつの原因

一般的に原因は一つではなく、いくつかの要因が重なり発症すると言われている産後うつ。ここではその代表的な原因をご紹介していきます。

家族や友人のサポート不足

人間はもともと、赤ちゃんをコミュニティ全体で育てることで生き残ることに成功し、種を繁栄させてきた歴史があります。一方、現在日本では核家族化が進み、子育てするお母さんが社会から孤立してしまい、子育ては家族ごとの問題という認識が強まっています。

また実家が近くにない人は頼れる両親もおらず、周りの人にも手助けを求めるのが難しいと感じる人も多いでしょう。お母さん自身、産後で体調がままならないうちに、周りのサポートを得られず一人で子育てを背負い込むことになってしまい、無理がたたって産後うつになってしまうことが原因の一つとして考えられています。

社会や周りの目など、プレッシャーによるストレス

いまだに「子育ては母親の仕事」「母親なんだから子育てくらいやって当然」「産後辛いのはみんな一緒。弱音を吐くのは甘えているだけ」などと考えている人も多くいます。母親自身もそんな目にさらされる機会が多く、自分にプレッシャーをかけてしまうことでストレスが重なり、病んでしまうケースもあります。

また思うように赤ちゃんが母乳を飲んでくれなかったり、夜泣きをして寝てくれなかったり、泣き止まなかったりする場合、睡眠不足をはじめとした体力不足に加えてストレスがたまってしまうのもしょうがないことです。しかしこれが産後うつのきっかけになっていることも大いにあるため、ストレスが続く場合は適切な対処を行う必要があるでしょう。

完璧主義で真面目な性格の人や、うつ病の既往歴がある人

「母親なんだから母乳で育てなければいけない」というふうに、理想の母親像を完璧に実現しようとする真面目な性格の場合、産後うつになりやすい傾向にあるとも言われています。立派な母親になろうと思うことは素晴らしいことですが、子育てというのは思い通りにいくものではなく、全てうまくこなせる人などいません。多くの目標を掲げ、それが達成できない自分を責め続けてしまうと、結果的に自信を喪失・不安感に苛まれやすくなり、気分が落ち込みやすくなってしまいます。

また、以前にうつ病もしくは適応障害など精神的な病気にかかったことがある人は、産後うつとして再発しやすいと言われています。他にも家族の中で精神的な病気にかかったことがある人がいる場合、産後うつになりやすいことも指摘されています。

産後うつの対処方法

産後うつは、何より本人のストレスを減らし周りがサポートしてあげることが大切です。ここでは母親自身でできること、周りの人ができることに分けて紹介していきます。

母親自身ができる産後うつの対処法

パートナーや家族、友人に話を聞いてもらう

大人になると弱音ってなかなか吐けませんよね。しかし弱音を吐き出すだけで心が軽くなる場合は多くあります。

また旦那さんや他のご家族も子育てを手助けたいと思っていても、何をどう助けたらいいかわからないというケースもあります。まずは子育てで困っていること、助けて欲しいこと、逆に嬉しかったことなど要望だけでなく気持ちを共有してみることから始めてみるのはいかがでしょうか。

信頼できる人たちに話をするだけでも、心が楽になることはあります。また周りの人も話してもらったことで気づくことも多く、一緒に子育てするパートナーとしての意識や絆が強まることも期待できます。

周りの人に子育てを手伝ってもらう

一人で子育てできる人はいません。そして子供は母親だけに限らず、周りの大人や社会が一緒になって育てていくべき存在です。一人で子育てを抱え込んでしまっている場合は、遠慮せず周りに助けを求めサポートしてもらいましょう。

パートナーや家族、友人のサポートが難しい場合は地域の「子育て世代包括支援センター」など行政に相談するのもおすすめです。要望によって保健士やソーシャルワーカーの支援を受けることができます。

定期的に母親という役割を休憩してみる

出産してから24時間母親としての責任を全うしなければと気負ってしまう人もいるかもしれませんが、たまには母親という役割を休憩してみることも必要です。人は誰しもいろんな側面を持って生きています。出産したらいきなり母親になるわけでもありませんし、24時間365日母親として人生を生きるというのは到底無理な話です。

もしストレスが溜まっていたり、体力の消耗が激しい場合は思い切って赤ちゃんを誰かに預けてゆっくり休むことが大切。リフレッシュすることでお母さん自身が幸せになれば、結果的に赤ちゃんにも優しく愛情を持って接することができるようになり、赤ちゃんのためにもなります。最初は罪悪感を覚えてしまうかもしれませんが、長期戦となる子育てこそ、定期的にリフレッシュしてガス抜きしましょう。

ママ友を作ったり、家族とは別の居場所を作ってみる

産後うつになりやすい理由の一つに、お母さんの孤立があります。四六時中家庭の中だけで子育てをしていると、自分が社会から孤立してしまったように不安になることもあるでしょう。また、子育てに関する悩みを抱えているけれど、夫や両親など立場が違う人には気持ちをわかってもらえず辛い思いをしてしまう場合もあるかもしれません。

そのような場合は、同じような境遇の子育て中のお母さんたちと交流するのもおすすめです。実際にあった子育ての悩みや対処法などを語り合うことで心が軽くなりますし、有益な情報も得られるほか、子育てする上での大きな心の支えになるはずです。

また、ママ友コミュニティだけでなく、家族以外の居場所を作ることもおすすめ。気持ちを切り替え、リフレッシュすることができるはずです。

完璧主義をやめて、自分を褒めるようにする

「絶対母乳で育てないと」というように一般的に良いとされている子育てを全てこなそうとするのは素晴らしいことに思えます。しかし最初から全てうまくできるお母さんはいません。完璧主義を重ねるうちに自分を責めてしまうと、次第に自信を喪失し、気分が落ち込んでしまう恐れがあります。

そのような場合は一旦できないことに目を向けるのではなく、できたことに目を向けるようにしてみてください。そして「十分頑張っている」と自分を褒めてあげてください。

パートナーなど周りの人ができる産後うつの対処法

子育てを一緒に行う

おむつ交換、寝かしつけ、夜泣きの対応、お風呂、抱っこなど、子育てはお母さん以外でもできることはたくさんあります。まずは何より子育てを分担してお母さんと一緒に行うことが、産後うつ予防や治療の近道でしょう。

出産というのは母体にも大きなダメージがかかるほか、ホルモンバランスも変化するため、ある意味お母さんは病人と同じくらい弱っています。「お母さんは体も大変だし、自分がやってあげよう」と周りが子育てに積極的に取り組むことが、お母さんにとって大きな助けになります。

話をしっかり聞いてあげ、愛情を注ぐ

不測の事態が多い子育てに、お母さんの悩みや気苦労は尽きません。けれど自分からは弱音を吐けないという頑張り屋のお母さんも多くいます。

そんな人たちが一人でストレスを抱え込まないためにも、周りの人たちは話をしっかり聞いてあげることを意識してみてください。話を聞くことでどんなことをお母さんが求めているのか、どんな状況にあるのかがわかるはずです。辛いと思っていることがあれば改善・サポートする手助けをするのも大切です。

お母さんを休ませ、一人時間をあげる

夜泣きや母乳をあげるために睡眠不足に悩まされてしまうと、お母さんは産後うつを発症しやすくなります。お母さんの睡眠不足が疑われる場合は、しっかり睡眠が取れるよう夜泣きの対応を交代するなどサポートするようにしましょう。

また赤ちゃんにつきっきりで対応することが続いている場合も、お母さんへ一人時間をあげることが大切です。心も体もしっかり休める時間があるだけで、産後うつの発症や長期化を防ぐことができるはずです。

みんなの産後うつ体験談と対処法

実際に産後うつになってしまったお母さんは、どのように対処していったのでしょうか?実際の体験談をご紹介していきます。

その時の夫は、腫れ物に触るような感じ。夫のせいいっぱいのほめ言葉は「赤ちゃん、かわいいね」でした。でも、その言葉自体が、私にはしゃくにさわる……。夫はかわいいその瞬間しか見ていないくせに、と。今思うと、子どもにではなく、私自身に声をかけて欲しかったのだと思います。耳鳴りがし て、涙が止まらず、死にたいとまで思うようになりました。
 
産後8カ月の時に、産後のボディケア&フィットネス教室に参加。自分の言葉で話すこと、自分にお金をかけること、子どもを短時間ずつ預け仕事を始め、少しずつ産後うつから治癒していきました。

ペンギンパパ・プロジェクトより引用

まとめ

「うつ病は甘え」「育児ができないなんて母親失格」「自分を犠牲にしてでも子供を優先すべき」日本にはこういった母親神話がいまだに蔓延っており、多くの女性たちがこのプレッシャーにより苦しめられているという問題があります。

母としての使命感や責任感は確かに必要ではありますが、子供は社会全体で守り育てていくべき存在です。産後うつは決して母親としての覚悟のなさや甘え、子供への愛情のなさから発症する病気ではありません。出産後の女性ホルモンの変化や環境の変化により、誰もがかかる可能性のある病気です。夫や家族とコミュニケーションをとり、これらの事実を理解してもらうことも大切ですが、それに加え自治体の産後ケアセンターや助産師さんなど専門家に相談することも考えるといいかもしれません。

最近では、育児のドキュメンタリー映画もありますので、これからの育児や育児中の悩みなど、共感できることも多いはず。

一人でも多くのお母さんが、健やかに子育てを行っていけるよう、周りの大人たちも温かく見守りサポートするような世の中を実現していきたいですね。


参考文献

・NHKスペシャル取材班(2016) 『ママたちが非常事態!?-最新科学で読み解くニッポンの子育て-』ポプラ社

・きゅー(2016)『産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと-妊娠・出産を安心して迎えるために-』KADOKAWA

・ミィ(2018)『脱産後うつ-私はこうして克服した-』講談社

・池下育子・宗田聡・原田優子・吉岡マコ(2012)『産後ママの心と体をケアする本-出産した女性が本当にしておきたい-』日東書院本社