「オーガニックコットンと普通のコットンの品質には違いがない」
は嘘?本当?

2020.01.20

オーガニックコットンと普通のコットンの違い

エコや環境問題、健康志向などを受けて、世間におけるオーガニックコットンへの興味関心はこの10年ほどで非常に高まってきました。
さまざまなメディアにも取り上げられるようになったなか、人気TV番組『林先生が驚く初耳学』で「オーガニックコットンは、普通のコットンと品質が変わらない」という情報がOAされました。林先生も初めて耳にする話で、スタジオは大いに盛り上がっていたのですが――。

実は、コットン業界の有識者によると、「この情報はあまりに説明不足で、真実を伝えているとは言えない」とのこと。そこで、オーガニックコットンと普通のコットンは、本当に同品質なのか。違いがあるとすれば何なのか。

コットンを巡る真実をここでお伝えします!

オーガニックコットンと普通のコットン、「綿花」では同品質でも「製品」には違いが!

製品に違い

『初耳学』でも説明されていたとおり、オーガニックコットンと普通のコットンは、科学的検査に通した場合、ほぼ同品質といわれています。残留農薬もとても少なく、科学的な試験ではオーガニックコットンと区別がつかないほどとの結論。番組には、日本オーガニックコットン協会の森和彦理事長が出演して説明していましたが、この内容そのものにはなんら異を唱えるつもりはありません。

しかし、これはあくまで「綿花の状態」かつ「科学的な試験を行った場合」の話。実際に2つの綿花を目で見て比べてみるとどうなのでしょうか?

オーガニックコットンの綿花は、全体的にふっくらふんわりとしていますが、普通のコットンの綿花は一部がギュッと偏っていたり、オーガニックコットン綿花と比べると膨らみ具合が小さかったりなど、違いが見られます。

これは、収穫方法の違いによるところが大きいですね。オーガニックコットンの綿花は、よく育った状態、果物でいう“完熟”のような状態を見計らって摘まれますが、通常のコットンは、枯れ葉剤を散布して人工的に葉や茎を枯らし、大量を効率的に収穫します。未熟な状態で刈り取られる綿花も少なからずあるため、綿花の状態、ひいては1本1本の繊維にも大きな違いが出るというわけです
(コットン業界・有識者)


さらに、さまざまな加工を経て「製品」となった場合、普通のコットンとオーガニックコットンでは手触りやその後の使用感に大きな違いが生じます。

というのも、普通のコットンは、糸から生地にする課程でさまざまな化学処理が施されますが、オーガニックコットンでは、化学処理を極力行いません(すべてのメーカーがそうだとは言い切れませんが、良心的なメーカーほど化学処理をしないとは言えるでしょう)。そのため、製品になったときに大きな差が生じるのです。

一般的に、私たちが手にするのは「綿花」ではなく、コットン「製品」です。なので、「製品」となった場合の通常コットンとオーガニックコットンの違いが知りたいと思うのが、消費者目線ではないでしょうか。なのに、初耳学』では、製品ではなく「綿花」で、しかも見た目ではなく「科学的成分」で比較しています。これでは「あまりに説明不足」ですし、不自然とさえ感じてしまうのです。

『林先生の初耳学』で語られなかった
通常のコットンとオーガニックコットンの違い

〜その①〜
「遺伝子組み換え(GMO)」綿花かどうか〜
遺伝子組み換え

『初耳学』で語られなかったことは、もっとたくさんありますが、特に大きな3つの違いを紹介します。ひとつは、遺伝子組み替え綿花かどうかということ。実は、世界の9割以上の綿花は「遺伝子組み換え」綿花だと言われています。つまり、オーガニックコットンでないコットン=遺伝子組み換えコットンと言っても過言ではないほど。

「口にするものじゃないから、そこまで気にしなくてもいいのでは」

そう思う方もいるでしょう。確かに、コットン製品そのものには、遺伝子組み換えコットンであることがさほど影響しないのかもしれません。しかし、綿花の中には種が入っていて、その種を絞れば綿実油となり、食用油として一般的に流通しています。さらに、その絞りかすや遺伝子組み換えコットンの草の部分は牧畜の餌となり、その牧畜を私たちが食べるという食物連鎖のなかで、知らず知らずのうちに遺伝子組み換え食品を体内に取り込んでいる可能性が考えられるのです。こうして、間接的とはいえ遺伝子組み換えコットンは人体にも影響を及ぼしかねないという現実を目の前にしたときに、「普通のコットンとオーガニックコットンの綿花の科学的品質には違いがない」という情報は、確かにそうなのかもしれませんが、そこをフォーカスして伝えなければいけないことなのか? もっと早急に取り上げるべき事実があるのではないか、と疑問が生じます。

そもそもなぜ遺伝子組み換えコットンが開発されたのか。それは、害虫の被害から綿花を守るためです。ある遺伝子組み換えコットンは、毒性を出す土壌中の微生物の遺伝子を取り込んで生まれました。結果、この毒性が人や家畜にまで悪影響を及ぼしたり、害虫が耐性をもち始めて結局、綿花が被害に遭うといったことが起きています。そして、害虫駆除のためにさらに殺虫剤を散布する…。こうした種と土壌で育つ綿花と、遺伝子組み換えでない種から無農薬・有機肥料で育つオーガニックコットン綿花が同品質になるかどうか。冷静に考えればすぐに答えは出るのではないでしょうか。綿花も野菜や花と同じ作物なのですから。
そして、綿花栽培を取り巻く大きな問題については、また機会をあらためて説明したいと思っています。

『林先生の初耳学』で語られなかった
通常のコットンとオーガニックコットンの違い

〜その②〜
製品への加工時に「化学処理」を施しているかどうか
化学処理

少し述べたとおり、コットン製品を作るには、綿花を糸にして生地・製品にするなどさまざまな工程があります。通常のコットンは、糸から生地にするまでに数多くの化学処理が行われるため、本来の風合いが失われてしまいます。その風合いを再現するために柔軟剤や吸収剤などが使用されるので、洗濯をするたびに加工した柔軟剤が取れていき、硬くパサついた生地になっていきます。

オーガニックコットンを加工する際は、素材本来のふっくら感や持ち味を活かすために、良心的なメーカーほど化学処理をほとんど行いません。繊維本来の風合いを保ったまま生地にするので、洗濯すると洗濯前よりもむしろ繊維がふっくらと立って、やわらかい肌触りが得られるのです。洗ったり着続けたりするほど肌になじむという着心地のよさは、オーガニックコットン製品ならでは。くったり=いい味になるというのも、オーガニックコットン製品ならではの持ち味なのです。

『林先生の初耳学』で語られなかった
通常のコットンとオーガニックコットンの違い

〜その③〜
アレルギー症の人でも着用可能かどうか
アレルギー

肌にやさしいイメージのあるコットンですが、実は通常のコットン製品を着用できない人がいます。特に、化学物質過敏症の方は、繊維に残る微量な化学物質に反応してしまい、つらい症状が出てしまうことが多いのです。アレルギー症やアトピーの方にも同様のことが見られます。そうした方々でも、NOC認証のオーガニックコットン製品なら問題なく着用できるということが多いのです。

NOC認証タグとは、正当な認証機関が証明した有機栽培コットンを100%使用し、糸や生地、最終製品の加工までNOCコットン規準に沿って、化学的な処理をせずに仕上げられたことを示すもの。日本オーガニックコットン流通機構が定めた基準に則った製品にだけ付けることができます。もちろん、NOC認証とはいえ、オーガニックコットン製品なら化学物質過敏症やアレルギー症の方全員が着用できると言い切るつもりはありません。それでも、オーガニックコットン製品は、通常のコットン製品よりも安心して着られる人が多いということは確実といえるでしょう。

こうしたことからも、普通のコットンとオーガニックコットンを「綿花」ではなく、できあがった「製品」で比較しないと、あまり意味をなさないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。

まとめ

オーガニックコットンと一般的コットンは、
製品となった時点で品質に大きな違いが生まれていた!
上手に使い分けたい。

番組内では、「通常のコットンとオーガニックコットンは、オーガニックコットンのほうが環境によいだけで品質は同じ。なのに、価格は2倍」という結論に至っていました。
オーガニックコットンが環境によいこと、科学的成分で見た場合2つの綿花はほぼ同品質であることは間違いありません。

しかし、無農薬・有機肥料で育てられた野菜と、基準内とはいえ農薬や化学肥料を使って育てられた野菜を「環境によいだけで、科学的に見ると成分は同じ」と割り切れるでしょうか。たとえ栄養成分的にはほぼ同じでも、香りや風味の違いが出て当然ではないでしょうか。綿花も同じことです。さらに、その後の加工にも大きな違いがあるため、品質が違って当然なのです。

これまで「肌触りがいい」「体になじむ」と思ってオーガニックコットン製品を選んできた方。安心してください。その感覚は決して間違っていません!

「でも本当にそうかなあ?」と疑いをもつ方。ぜひ通常コットンの製品とオーガニックコットン製品を手にとって比べてみてください。できれば試着してみるとなおさらよく違いがわかるはずです。

「しかし、オーガニックコットン製品は高いよね!」と嘆く方。綿花を育てて、摘み取るまでにも手間暇がかかっています。製品になるまでにもオーガニックコットンの良さを保つために職人たちがこだわり丁寧に作っています。また、長い目で考えてみましょう。洗うほどくったり肌になじんで長い間着用できるオーガニックコットン製品は、結果的にコストパフォーマンスがいいと言えるかもしれません。

結論:
通常コットン製品とオーガニックコットン製品では、品質に大きな違いがある!
肌触りがよく、体にやさしく、もちろん環境にもいい!

が、私たちの実状の生活に役立つという意味でより“正確な”情報といえるでしょう。

おまけ:番組制作者からの「結果ありき」の依頼

『初耳学』のようなエンターテインメント番組では、視聴者が「えっ!?」と驚くような情報を出したいという気持ちは理解できます。実際、「通常のコットンとオーガニックコットンは品質は同じ」は『初耳学』に認定され、ネットでは「マジか!」のような書き込みが増えるなどの反響もあり、番組的には大成功だったと言えるでしょう。情報だけを見た場合、間違ってもいません。しかしながら、意図的な編集が行われると、情報が合っていても何の意味もなさないということを実感しました。

実は、とあるオーガニックコットンメーカーにも『初耳学』への出演依頼があったそう。しかし、コットン栽培を取材するでもなく、「通常コットンとオーガニックコットンでは品質に差がないというネタを出したいので、それに紐付くコメントを話していただけませんか?」という“結果ありき”の依頼だったのだそうです。

さらに、出演を承諾した日本オーガニックコットン協会の森和彦理事長も、長時間オーガニックコットンの特徴を説明したあげく、使われたのはわずか数十秒。「一般的コットンもオーガニックコットンも品質に変わりはありません」というコメント部分だけだったのです。

綿花に触れることが少ない現状においては一般消費者に役立つ情報でもないのに、そこに焦点をあて、通常コットン製品とオーガニックコットン製品すら同品質と誤解されかねない演出をする。そうした編集は、いくらエンターテインメントといっても、あまり質のいいものとは言えない気がします。ただ、コットンを取り巻く現状やオーガニックコットンの真実を語る機会を与えてくれたという1点においては感謝したいですね(笑)。

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